営業の2回目の訪問で失敗しない進め方|アイドリングで温度を戻す
「1回目の商談は好感触だったのに、2回目の訪問で急に温度が冷めてしまった」。
営業の2回目の訪問でつまずき、同じ経験をした営業パーソンは少なくないはず。
1回目のアプローチと2回目の訪問は、まったく別物の商談です。顧客の温度感も、話すべき内容も、求められる振る舞いも変わっていくもの。
にもかかわらず、多くの営業パーソンは1回目と同じ感覚のまま臨み、せっかく開いたチャンスを逃してしまいます。
この記事では、2回目の訪問で成果を出すための準備から当日の進め方、決まらなかったときの対応までを解説します。必要なのは特別な才能ではなく、正しい型と準備。
最後まで読めば、2回目の訪問を「決める場」に変えるための具体的な手順が見えてきます。
東京工業大学卒業後、博報堂を経てプルデンシャル生命保険にて4年連続MDRT会員。営業所長・支社長としてマネジメントも経験し、育成メンバーの約60%をMDRT会員に育成。2019年、営業を科学することに特化した株式会社インビクタスを創業。
プロフィール詳細を見る →営業の2回目の訪問で成果が変わる理由
2回目の訪問は、1回目のアプローチとはまったく別物の商談です。
にもかかわらず、多くの営業パーソンは1回目と同じ準備・同じ感覚のまま臨み、結果に差をつけられてしまいます。
- 顧客が語った悩みの温度感を、1回目の直後に記録していない
- 1回目は「無関心」、2回目は「聞く準備ができている」という心理差に気づいていない
- 高額・無形商材ほど、2回目の一発で「決める・決めない」が決まる
3つの理由を、順に見ていきます。
顧客が語った悩みの温度感を、1回目の直後に記録していない
成果が出ない営業パーソンほど、1回目の商談を終えた案件をそのまま放置しがちです。2回目の直前になって、慌てて提案内容を考え始める。
そうなると、顧客が語った悩みの温度感を思い出せないまま商談に臨むことになります。
しかし、トップセールスは違います。1回目の商談が終わった直後に次回の提案内容を固め、詳細なメモを残しているもの。
準備を始めるタイミングの差こそが、2回目の訪問で結果を分ける最初の分岐点です。
1回目は「無関心」、2回目は「聞く準備ができている」という心理差に気づいていない
1回目のアポイントの段階では、顧客はサービスにほとんど関心を持っていません。一方、2回目の訪問はまったく違います。
あらかじめ指定した場所まで、わざわざ足を運んでもらう形を取るからです。
移動する時間の中で、顧客は「今日は何の話だったか」を自然と考え始め、到着した時点ですでに話を聞く準備が整っているのです。
この心理差に気づかないまま、1回目と同じ温度感で臨む営業パーソンが後を絶ちません。
高額・無形商材ほど、2回目の一発で「決める・決めない」が決まる
生命保険や投資用不動産のような高額・無形の商材では、リードタイムが短い傾向にあります。
1回目のヒアリングと2回目の提案・クロージング、勝負はこの2回で決まるケースも少なくありません。
つまり2回目の訪問こそが、成約という最大の成果を手にする主戦場。この1回の質が、営業パーソン個人の成約率を大きく左右します。
2回目の訪問の成否は1回目の終わり方で決まる
2回目の商談は、実は1回目の訪問の「別れ際」からすでに始まっています。
1回目の終わり方一つで、2回目への期待感は大きく変わるもの。
- 1回目の訪問の最後に「次回の予告」をしておく
- 次回話す内容を映画の予告編のように伝える
- 次回のアポイントは初回訪問中に日時を確定させる
- 信頼できる第三者の変化を伝えて、期待感を高める
1回目の終え方から、具体的に見ていきます。
1回目の訪問の最後に「次回の予告」をしておく
1回目のヒアリングが終わったタイミングで、次回お話しする内容をあらかじめ合意しておくことが鉄則です。
「次回は、いただいた情報をもとに、ぴったりの解決策をお持ちします」。
そう伝えるだけで、2回目への心構えは変わります。予告のひと言があるかどうかが、次回のアポの重みを決めるのです。
次回話す内容を映画の予告編のように伝える
単に「次回プランをお持ちします」と営業側の都合で伝えるだけでは弱いもの。
顧客が将来手にする理想の状態を具体的に描写し、映画の予告編のように魅力的な場面として伝えます。
続けて「次回のお話、聞いてみたいと思っていただけましたか」と質問し、顧客自身の言葉で期待の理由を語ってもらうことも有効。
自分の言葉で語った期待は、本人の中で強く残っていきます。
次回のアポイントは初回訪問中に日時を確定させる
「また連絡します」。この言葉を鵜呑みにして帰ると、次のアポは高い確率で取れません。
忙しい相手であっても、1回目の商談の場でカレンダーを開いてもらいます。候補日は2択で提示。
当日中に日程を決め切ってから帰ることが、プロとしての基本の動きです。
信頼できる第三者の変化を伝えて、期待感を高める
信頼できる第三者が実際に得た変化を伝える手法は、次回への期待感を大きく高めます。
紹介元の知人が得た変化を伝えると、顧客は自分にも関係があるかもしれないと感じやすくなるもの。
第三者話法の詳しい効果と実践例は、以下の記事で解説しています。
>>【関連記事】第三者話法とは?心理学的効果と営業での実践例を解説
2回目の訪問の冒頭でやるべき「アイドリング」
2回目の訪問は、提案の前に必ず「アイドリング」という助走を挟みます。
アイドリングとは、顧客の意識を日常モードから商談モードへ切り替え、話を聞き決断する準備へ導くための工程のこと。
天気や趣味といった雑談でアイスブレイクを図る営業パーソンは多いです。しかし、目的のはっきりしない雑談は、かえって信頼を損ないかねません。
アイドリングは、思いつきの雑談とは違い、あらかじめ組み立てた流れに沿って進めるトークです。
- 前回の話を思い出してもらう
- 「今日は何のお話でしたっけ」で目的を再確認してもらう
- 今日のゴールを最初に共有する
- アイドリングを飛ばすと、提案は「売り込み」に変わる
順番に確認していきます。
前回の話を思い出してもらう
いきなり資料を開いてはいけません。1回目の商談直後に残したメモをもとに、前回の内容を振り返ります。
顧客が語った悩みや家族への思いを、当時の言葉でそのまま伝え返す。
それだけで、商談へ向かう意識が自然と切り替わっていきます。
「今日は何のお話でしたっけ」で目的を再確認してもらう
「今日はどのような経緯でお時間をいただけたのでしょうか」と尋ね、顧客自身の言葉で来訪の理由を語ってもらいます。
自分の言葉で理由を語った人は、以降の話を真剣に聞く姿勢へと自然に切り替わるもの。
一貫性の原理と呼ばれる心理学の効果を応用した進め方です。
今日のゴールを最初に共有する
アイドリングの締めくくりとして、今日のゴールを顧客とすり合わせておきます。
「本日ご納得いただけましたら、一歩を踏み出していただきたいのですが、よろしいでしょうか」。あらかじめ、こう合意を取っておくのです。
ゴールを先に共有しておけば、商談の終盤で急に決断を迫られたと感じさせずに済みます。
アイドリングを飛ばすと、提案は「売り込み」に変わる
挨拶が終わってすぐに、提案資料を広げてしまう。顧客の意識は、まだ日常モードのままです。
どれほど優れた提案でも、心の準備ができていない状態では「売り込み」としか受け取られません。
結果として、商談の終盤で言い訳を誘発し、決着から遠ざかっていきます。
【業種別】2回目の訪問で使える具体的な進め方
2回目の訪問の型は、業種によって当てはめ方が少しずつ変わります。
保険・不動産・法人営業それぞれの具体例を確認しましょう。
- 保険営業は、数字より先に家族の未来を描く
- 投資用不動産は、月々の負担額と将来の安心をセットで示す
- 法人営業は、担当者と一緒に稟議資料を作る
- リスクを先に直視してもらい、メリットを後に置く
業種別に、具体的な進め方を見ていきます。
保険営業は、数字より先に家族の未来を描く
生命保険を扱う営業パーソンは、特約の細かな数字や解約返戻金の説明から入りがちです。そこに未来はありません。
成果を出す営業パーソンほど、保障によって家族がどのような暮らしを続けられるのかという未来の場面を先に描写します。
未来の場面を具体的にイメージしてもらったうえで、描いた未来に近づく手段として、プランを提示するのです。
投資用不動産は、月々の負担額と将来の安心をセットで示す
投資用不動産で顧客が求めているのは、将来の安心につながる仕組みです。
月々の実質負担額を具体的な数字で示し、負担に見合う将来の安心を明確に伝えます。
万一の際にローンが完済され、家賃収入が残る仕組みも、生命保険の代わりとして伝えられる要素の一つです。
法人営業は、担当者と一緒に稟議資料を作る
担当者は敵ではありません。
法人営業の2回目の訪問で意識したいのは、社内の稟議を担当者と一緒に通しやすくする資料作りです。
「味方」として扱い、資料作成をサポートする姿勢が、社内での後押しにつながります。
リスクを先に直視してもらい、メリットを後に置く
メリットだけを並べても、顧客の心は大きく動きません。
対策をしないまま将来を迎えた場合の不安を、先に直視してもらいます。続けて提示するのは、解決策としてのメリット。
感情の動きを踏まえた順番設計が、成約への後押しになります。
2回目の訪問で決まらなかったときの対応
2回目の訪問は成約を目指す場ですが、当日に決め切れないことも珍しくありません。
決まらなかったときの対応こそ、次につながるかどうかを分ける重要な工程です。
- 納得していない相手を、無理に押さない
- 連絡待ちにせず、その場で次回のアポまで決める
- 「今日決めなくていい」と伝えて、踏み出せない理由を聞く
- 次回への明確な宿題を定義してからアポを取る
- 「決断は顧客のもの」という姿勢を崩さない
対応の仕方を順に確認します。
納得していない相手を、無理に押さない
顧客の納得感が、まだ十分に育っていない。その段階で契約を迫れば、強い反発と拒絶を招きます。
無理に押した結果として関係性が壊れてしまえば、紹介などの今後の可能性も同時に失われるもの。
決断を急がせるより、納得の段階を見極める姿勢の方が結果的に近道です。
連絡待ちにせず、その場で次回のアポまで決める
「また考えがまとまったら連絡してください」と伝えて帰るのは避けたい対応です。
顧客からの連絡待ちの状態になった案件は、宙に浮いてしまいやすいもの。
気になっている点を次回までに調べておくことを約束し、当日中に次回のアポイントまで確定させて商談を終えます。
「今日決めなくていい」と伝えて、踏み出せない理由を聞く
「今日決めなくても大丈夫です」。そう伝えることが、信頼を得る近道になります。
続けて「一歩を踏み出せない理由」を静かに尋ね、あとは黙って相手の言葉を待つ姿勢が有効です。
沈黙を使ったクロージングの具体的な手法は、以下の記事で詳しく解説しています。
>>【関連記事】営業の沈黙で成約率UP|サイレントクロージングの極意と実践法
次回への明確な宿題を定義してからアポを取る
決断が保留になった場合は、次回への明確な宿題を定義してからアポを取るのが鉄則です。
「気になっている点について、次回までに回答を準備してきます」。そう伝えれば、次回の商談にも明確な目的が生まれるもの。
宿題のない先延ばしと、宿題つきの先送りとでは、次回の成約率が大きく変わります。
「決断は顧客のもの」という姿勢を崩さない
しつこいと感じられる原因の多くは、営業パーソン側の都合が透けて見えることにあります。
「決断は顧客自身のもの」。この姿勢を崩さずに、中立な立場から情報を提示し続けることが大切です。
プロとしての距離感を保てていれば、何度アプローチしても頼れる存在として受け止められるもの。
3回目以降の訪問との違い
2回目の訪問と3回目以降とでは、目指すゴールが異なります。
違いを理解しておくことで、訪問ごとの役割がはっきりします。
- 2回目は納得を積み重ね、3回目は手続きを完了させる
- 3回目は保留を引き延ばさず、白黒をつける
2点を、順に確認していきましょう。
2回目は納得を積み重ね、3回目は手続きを完了させる
2回目の訪問のゴールは、提案内容への納得を積み重ねることです。
一方で3回目のゴールは、残った疑問を解消し、契約に向けた手続きを完了させること。
3回目は保留を引き延ばさず、白黒をつける
3回目の商談は、保留を引き延ばす場ではありません。
前回までに積み上げた内容をもとに、進めるか進めないかを明確にする場として臨みます。
曖昧なまま終わらせず、白黒をつける意識こそ3回目には欠かせません。
2回目の訪問の質を高めるための事前準備
2回目の訪問の成果は、当日までの準備で大きく変わっていくもの。
商談前にやっておきたい準備を確認しましょう。
- 今日伝える提案内容を、一言で要約できるようにしておく
- 想定される質問・反論への回答を、事前に用意しておく
- 商談時間の配分を、あらかじめ決めておく
最後に、当日までの準備を見ていきます。
今日伝える提案内容を、一言で要約できるようにしておく
提案の中身を、一言でわかりやすく要約できる状態にしておきます。
今日の提案がどの不安を解消し、どのような未来につながるのか。
短い言葉で語れるようにしておけば、商談の随所でぶれずに伝えられるうえ、説明全体の一貫性も自然と高まっていきます。
想定される質問・反論への回答を、事前に用意しておく
クロージングの場面で返ってくる断り文句は、いくつかのパターンに絞られます。
代表的な「検討したい」という反応への切り返しは、以下の記事で詳しく解説しています。
>>【関連記事】営業で「検討します」と言われたときの切り返しトーク
「他社と比較したい」「誰かに相談したい」といった反応にも、事前に切り返しの流れを準備しておくもの。
準備をしておくことで、当日の対応にぶれがなくなっていきます。
商談時間の配分を、あらかじめ決めておく
商談全体の時間をあらかじめ区切っておくことも、準備の一つです。
アイドリングに10分、提案本編に30分、クロージングに20分というように配分を決めておきます。
雑談に時間を使い切ってしまう事態を防げるのです。
まとめ
営業の2回目の訪問は、1回目とはまったく別の準備と進め方を必要とする商談です。
前回の振り返りと今日のゴール共有によるアイドリング、業種に合わせた提案の組み立て、決まらなかったときの丁寧な対応。
型として押さえておくだけで、2回目の訪問の成果は着実に変わっていきます。
以下のポイントを押さえておきましょう。
- 1回目の終わり方で「予告」を作っておく
- 2回目の冒頭で前回の振り返りと今日のゴールを共有する
- 決まらなかった場合も、次回への宿題とアポを明確にする
さらに属人化から脱却し、営業の型を仕組み化する考え方は、以下の記事で解説しています。
>>【関連記事】「営業に再現性がない」を解決|属人化から脱却する仕組み作り
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