投資用不動産の営業は物件を売るな。信頼を売って成約率を上げる具体的手法
投資用不動産営業は、営業職のなかでも特に難しいと言われます。
しかし「なぜ難しいのか」を正確に答えられる営業マネージャーは意外と少ないのです。
「もっと数を回せ」「気合が足りない」。
そうした指導を繰り返しても、組織の成果はなかなか変わりません。
難しさの本質を理解できていないからです。
この記事では、投資用不動産営業が難しい構造的な理由と、成約率を上げるための「信頼演出」「台本設計」「提案の本質」を解説していきます。
東京工業大学卒業後、博報堂を経てプルデンシャル生命保険にて4年連続MDRT会員。営業所長・支社長としてマネジメントも経験し、育成メンバーの約60%をMDRT会員に育成。2019年、営業を科学することに特化した株式会社インビクタスを創業。
プロフィール詳細を見る →投資用不動産営業が難しい本当の理由
投資用不動産営業が住居用営業と根本的に異なる点は、顧客が物件を見ずに買うことです。
岐阜のアパートを購入する人が、わざわざ岐阜まで足を運ぶでしょうか。
実際のところ、ほとんど運ばないでしょう。
物件を見ない状態で数千万円の判断をするからこそ、顧客が拠り所にするのは「物件のスペック」ではないのです。
「担当営業が言うなら大丈夫だ」という信頼が、すべての起点になります。
- 住居用は「来た人を買わせる仕事」
- 投資用は「来ない人を連れてきて、信頼を得て買わせる仕事」
さらに難しいのは、そもそも投資に興味のない人に「話を聞いてください」と伝えるところからスタートする点です。
商談のテーブルについてもらうまでが営業の仕事の8割を占めると言っても過言ではありません。
だからこそ、投資用不動産営業では「物件説明のうまさ」より「信頼を得る技術」の方が、圧倒的に成果を左右します。
学歴や経歴に関係なく、努力次第で年収1,500万〜2,000万円が狙える。
数ある営業職のなかでも、そう多くはない職種でしょう。
成約率を高める「信頼演出」の設計
投資用不動産営業の成約は、信頼演出が約8割を占めます。
この信頼は偶然の産物ではなく、意図的に設計できるものです。
- 初回商談の最初の3分で信頼の土台が決まる
- 自己開示の量とタイミングを設計する
- 共通点探しより「安心感の演出」を優先する
順に見ていきましょう。
初回商談の最初の3分で信頼の土台が決まる
商談全体が数時間に及ぶ場合でも、最も重要なのは最初の自己紹介の3分間です。
「この担当者は信頼できそうだ」。
そう思わせる印象を最初の3分で作れれば、以降の商談で嫌われる方がむしろ難しくなります。
インビクタスのコンサルティング現場でも、自己紹介のロールプレイング(商談練習)を欠かしません。
自己紹介を練習していない営業マンが、あまりにも多いからです。
最初の3分で何を話し、何を話さないか。
残り30分の商談では、情報開示のタイミングを設計すること。
設計の有無によって、商談全体のクオリティは根本から変わってきます。
自己開示の量とタイミングを設計する
お客様は営業マンから得た断片的な情報を、自分の過去の経験と掛け合わせて「この人はこういう人だ」と評価します。
だからこそ、相手に想像される前に自ら正しい自己開示を設計しておく必要があります。
なぜ営業の仕事をしているのかという志(Why)を起点に語り、志を裏付ける過去の経験を3分間のストーリーとして伝える。
志を起点にしたストーリー設計こそ、有効な手法です。
一度にすべてを話してしまえば、後から信頼を積み上げる機会は失われてしまいます。
段階的に自己開示していくことこそ、商談全体を通じた信頼構築の近道といえるでしょう。
共通点探しより「安心感の演出」を優先する
多くの営業マンがアイスブレイクで共通点を探ろうとします。
しかし、初対面の営業マンに共通点を探られたいお客様は、ほとんどいません。
「今度一緒にフットサルやりましょうよ」と言っても、初対面の相手からそんな提案をされたくないというのがお客様の本音。
顧客が求めているのは親近感ではなく「この人に任せて大丈夫か」という安心感です。
無理な距離の詰め方をやめ、まず志と実績を伝えることで安心感を演出する方が、信頼構築の近道になります。
投資用不動産営業ではトークスクリプト(台本)が命
「台本通りだと不自然になる」
そう考える営業マンは多いものです。
しかし実際には、台本を完璧に習得した営業マンのトークほど自然に聞こえます。
営業は、商談という舞台に立った俳優と同じだからです。
台本なきアドリブで商談できるのは、営業歴30年以上のベテランだけ。
新人・中堅がいきなりアドリブを目指すのは、順序として間違っています。
- 台本があると、「次に何を話すか」を考える脳の負荷がゼロになる
- その分、お客様の表情・心理状態を観察することに集中できる
- チームに共通言語が生まれ、具体的なフィードバックが可能になる
台本がない組織では、「もっと気持ちを込めて」「自信を持って話せ」という感覚論に頼るほかありません。
一方、台本がある組織では「クロージング前の切り返しトークを練習しよう」と、具体的な指導ができます。
そもそも「台本」と「営業マニュアル」は、まったくの別物です。
マニュアルは「こういうスタンスで営業しよう」という方針や商品知識を記述したもの。
台本は「初めましてからどういう言葉で話すか」を一字一句書き起こしたものです。
自社に「本物の台本」があるかどうか、一度確認してみてはいかがでしょうか。
インビクタス代表の岡は、プルデンシャル生命時代に90分のセミナートークを徹底的に練習した経験を持ちます。
ホワイトボードの書き方、立ち位置、名刺の出し方まで、すべてを決めて反復練習した結果、採用部門で圧倒的な実績を残しました。
「日経新聞を読む暇があったら、まず台本を覚えてロールプレイングをしなさい」
岡の言葉は、インビクタスが数多くの営業組織を支援するなかで導き出した結論といえます。
投資用不動産営業の本質は「物件」ではなく「人生設計」を売る
投資用不動産営業を「物件販売の仕事」と定義してしまうと、成約の本質を見誤ります。
顧客が本当に買っているのは「物件」ではありません。
「自分の人生の問題を解決する仕組み」なのです。
- 老後・死亡保障を軸に「仕組みを売る」
- ヒアリングで潜在的な不安を引き出す
- 「物件はたまたまその手段」という発想に転換する
それぞれ解説します。
老後・死亡保障を軸に「仕組みを売る」
投資用不動産には、購入者が亡くなった際にローンが消滅する仕組みがあります。
実質的に、生命保険と同じ機能といっていいでしょう。
「20年間毎月いくら負担する。20年後から家賃収入が入ってくる。万が一亡くなったらローンがなくなって家族に資産が残る」
こう伝えられれば、単なる物件購入の話が人生設計の話に変わります。
「老後・死亡保障・相続」という3つの課題軸を持ちながら商談を進める。
そうすることで、顧客にとっての「買う理由」がはっきりと見えてきます。
3軸なしに物件情報だけを提示しても、顧客が自分ごととして受け止めることはないでしょう。
ヒアリングで潜在的な不安を引き出す
顧客は自分が抱えている不安を、ほとんど自覚していません。
「老後の資金は大丈夫ですか」「万が一のとき家族にいくら残せますか」
こう問いかけて初めて、漠然とした不安が言葉になっていきます。
不安の顕在化こそが、提案の起点です。
不安が言語化される前に物件を提示しても、顧客には「なぜ自分が物件を買う必要があるのか」が伝わりません。
ヒアリングにしっかり時間をかけることこそ、最も効率的な成約への近道になります。
>>【関連記事】クロージングがうまい人の特徴と切り返しトーク術
「物件はたまたまその手段」という発想に転換する
宅地建物取引士(宅建)の資格の有無が投資用不動産営業の成果にほとんど影響しない理由がここにあります。
老後の資産形成、家族への保障、相続対策。
こうした人生設計の提案こそが仕事の中心であり、物件はあくまで手段にすぎないのです。
物件知識よりも「人の人生に寄り添うヒアリング力」と「解決策を伝える提案力」。
こちらの方が、成約に直結するスキルといえます。
インビクタスが投資用不動産会社を支援する際も、商品説明トークより先に「人生設計の課題を引き出すヒアリングの型」を整備することを優先しています。
まとめ
今回の記事で解説した内容で、特に押さえておきたいポイントは以下の3つです。。
- 投資用不動産は「物件ではなく人への信頼」で買われる。信頼演出を意図的に設計することが成約の根幹を占める
- 台本がなければ再現性は生まれない。一字一句レベルの台本と定例ロールプレイングが組織を変える
- 提案の本質は「物件を売ること」ではなく「老後・保障・相続という人生課題の解決策を提示すること」にある
投資用不動産営業の成約率を上げるには、「物件を売る」発想から「信頼と人生設計を売る」発想への転換が最初の一歩です。
組織の成約率改善について詳しく話したい方は、ぜひ一度弊社にご相談ください。