資料ダウンロード お問い合わせ
KNOW-HOW

営業で「価格が高い」と言われたときの切り返しトーク|値下げ交渉の対処法

#営業スキル向上

「価格が高いですね」

商談中、この一言を聞いた瞬間、心臓がドキッとした経験はありませんか。多くのセールスパーソンが、この言葉に対してどう返せばいいのか分からず、焦って即座に値引きを提案してしまいます。

しかし、それは大きな間違いです。実は「高い」という言葉には2つの異なる意味があり、それを見極めずに対応すると、どんな交渉も失敗に終わってしまうことに。

この記事では、価格異議に対する正しい判断基準と、値下げせずに成約に導く具体的な切り返しトークをお伝えしていきます。

セールスパーソンは「高い」と言われると焦る3つの理由

「価格が高い」と言われたとき、多くのセールスパーソンが反射的に値引きを提案してしまうのはなぜでしょうか。実は、この行動の背景には3つの心理的な要因が深く関わっています。まずは、私たちが価格異議に直面したときに陥りがちな心理メカニズムを理解しましょう。

理由①:断られることへの恐怖

お客様を失いたくない一心で、値引きという安易な解決策に飛びついてしまう。誰もが経験したことのある、あの焦りですね。

「このお客様を逃したら、今月の目標が達成できない」

「せっかくここまで商談が進んだのに、この一言で終わってしまうのか」

こうした思いが頭をよぎり、冷静な判断ができなくなってしまうのです。

理由②:沈黙への不安

「高い」と言われた後の気まずい空気に耐えられず、何か言わなければという焦りが生まれてしまいます。あの重苦しい数秒間は、実際以上に長く感じられるものです。

実は、この「沈黙」こそがお客様が考えている証拠なのですが、多くのセールスパーソンはこの沈黙に耐えきれず、余計な一言を発してしまいます。

「では、特別に10%引きでいかがでしょうか」

この一言が、すべてを台無しにしてしまうのです。

理由③:商品への自信のなさ

本当にこの価格に見合う価値があるのか、自分自身が確信を持てていないケースも少なくありません。この迷いは、お客様にも伝わってしまいます。

  • 価格を提示する際の声が小さくなる
  • 「少し高いかもしれませんが…」と先に言い訳してしまう

自信のなさは、態度や言葉の端々に表れ、お客様に「やっぱり高いんだな」という印象を与えてしまうのです。

安易な値引きがもたらす3つの問題

即座の値引きは、目の前の商談を救うように見えて、実は以下のような深刻な問題を引き起こします。

多くのセールスパーソンが気づいていない、値引きの本当の代償について見ていきましょう。

問題①:商品の価値を自ら否定してしまう

値引きは「実は定価の価値がない」と認めているのと同じ。

お客様は「やっぱり高かったんだ」と感じ、さらなる値引きを要求してきます。

問題②:既存顧客への不公平が生まれる

すでに定価で購入してくれたお客様に対して、誠実さを欠く対応になってしまう。

信頼関係に傷がつき、長期的なビジネスに悪影響を及ぼすわけです。

問題③:値引き癖がついてしまう

一度値引きすると、次回以降も値引き前提の交渉になる。

利益率が下がり続け、ビジネスの持続可能性を損なう結果となるのです。

「価格が高い」には2つの全く異なる意味がある

お客様が「高い」と言うとき、実はその背景には2つの全く異なる意味が隠れています。この違いを見極めずに対応すると、どれだけ優れた切り返しトークを使っても効果を発揮しません。

逆に言えば、この2つのパターンを正確に判断できれば、価格交渉の8割は成功したも同然なのです。まずは、「高い」という言葉に隠された2つの意味を理解しましょう。

  • パターン①:【価値への異議】このサービスに対して、この値段は高すぎる
  • パターン②:【支払い能力への懸念】価値は理解しているが、今は支払えない

それぞれ順番に解説していきます。

パターン①:【価値への異議】このサービスに対して、この値段は高すぎる

提供する価値とお客様が感じる価値にギャップがある状態です。

「このサービスに対して、この値段は高すぎるのではないか」という認識ですね。

お客様の心理としては、商品・サービスの価値が理解できていない、または価値に納得していない状態です。

パターン②:【支払い能力への懸念】価値は理解しているが、今は支払えない

「商品の価値は十分分かる。でも今の予算では厳しい」という状態。

価値は認めているものの、支払い能力に懸念があるケースになります。

お客様の心理としては、 商品・サービスの価値は十分に理解しているが、予算や資金繰りに不安がある状態です。

「価格が高い」の”本音”を引き出す質問

では、どうやって見極めるのでしょうか。

答えは簡単です。直接聞けばいいのです。

○○様、差し支えなければお伺いしたいのですが、今『高い』とおっしゃったのは、

A:このサービスの価値に対して高いとお感じですか?

それとも、

B:価値は理解できるが、お支払いが厳しいとお感じですか?

この質問をすることで、お客様の本音が明確になります。質問の際は、落ち着いたトーンで、責めるような印象を与えないよう注意してください。あくまで「お客様に最適な提案をするため」という姿勢が大切です。

パターン別の正しい対処法と切り返しトーク

「高い」の真意が分かったら、次はパターン別の対処法です。

「価値が伝わっていない」ケースと「支払いが厳しい」ケースでは、取るべきアプローチが180度異なります。

ここを間違えると、せっかく見極めた意味がなくなってしまうのです。

それぞれのパターンに応じた正しい対処法と、実践的な切り返しトークを具体的に見ていきましょう。

パターン①:価値が伝わっていない場合の対処法

価値に対して高いと感じている場合、選択肢は2つしかありません。

選択肢A:価値を再度丁寧に説明し直す

「失礼いたしました。お伝えが不十分だったかもしれません」と前置きし、商品の価値を別の角度から説明します。

お客様が見落としている便益や、競合との差別化ポイントを具体的に示すわけです。

選択肢B:潔く諦める

価値を理解してもらえないなら、無理に売るべきではありません。「申し訳ございません。今回は見送りましょう」と伝えます。

無理に売っても、後でクレームになったり、悪い口コミが広がるリスクがある。むしろ、誠実さを示すことで、将来的な信頼関係につながる可能性もあるのです。

パターン②:支払いが厳しい場合の3ステップ交渉術

価値は理解しているが支払いが厳しい場合、ここから本当の交渉が始まります。重要なのは、すぐに値下げしないこと。

まずは価値を最大限に伝え、それでも厳しい場合に初めて条件付きの提案をするという流れが正解です。

以下の3ステップで対応しましょう。

  1. フレーミング効果で価値を再提示する
  2. 商品の付加価値を積み上げる
  3. それでも厳しい場合に「我慢」の選択肢を提示

それぞれ順番に具体例で解説します。

①フレーミング効果で価値を再提示する

フレーミング効果という心理効果を用いて、まずは価格の見せ方を変えます。同じ内容でも「見せ方」を変えることで、心理的なハードルを下げます。

【保険営業の例】
「月3万円は確かに大きな金額ですよね。ただ、1日あたりで考えると約1,000円。コンビニのランチ1回分で、ご家族の30年後の安心を守れるんです」「老後に毎月10万円の年金が受け取れるということは、20年間で2,400万円を受け取り続けられるということなんです」

【車の販売の例】
「このグレードは380万円ですが、10年お乗りになるとして月々約3.2万円。週末の家族のお出かけ、毎日の快適な通勤、それらすべてを考えると、実は1日1,000円ちょっとの投資なんです」

②商品の付加価値を積み上げる

お客様が見落としている便益や、競合にはない価値を具体的に示します。これにより、お客様に商品の本来の価値を感じてもらいます。

【保険営業の例】
「このプランには、24時間365日の健康相談ダイヤルもついています。深夜にお子様が急に熱を出したときも安心です」
「お子様の教育資金としても活用できる設計になっています。大学入学時には300万円を受け取ることも可能です」

【車の販売の例】
「燃費性能が旧型より30%向上しているので、年間8万円、5年間で約40万円のガソリン代削減になります」「この車種はリセールバリューが非常に高く、5年後の下取り価格は購入価格の60%、つまり約230万円が見込めます」

③それでも厳しい場合に「我慢」の選択肢を提示

ここまで粘って、それでも予算が合わない場合に初めて値下げ(グレードダウン)を提案します。ただし、ここでのポイントは「値下げ=何かを我慢する」という認識をお客様と共有することです。

【保険営業の例】
「○○様、ここまでお話しして、やはり今の予算では厳しいということですね。承知いたしました。では、今回は月2万円のプランにしましょう。ただし、老後の理想のライフスタイルを半分諦める形になります。健康相談ダイヤルや配当金のオプションも外れます。2年後、昇進されたタイミングで、今日ご提案した理想のプランに切り替えることをお約束いただけますか?」

【車の販売の例】
「分かりました。それでは、今回は280万円の下位グレードで我慢しましょう。安全装備の一部と、レザーシート、サンルーフは諦めることになります。ただ、5年後の買い替え時には、今日ご覧いただいた理想のグレードをご提案させてください。その頃にはお子様も大きくなって、より快適な車が必要になっているはずです」

このように、価値を最大限に伝えてから交渉するという流れが重要です。すぐに値下げに走らず、商品の価値を守りながら、お客様との長期的な関係を築くことができるのです。

なぜ「我慢」を伝えることが重要なのか

「値下げ=我慢」という認識を共有することには、以下の3つの理由があります。単なる値引きテクニックではなく、お客様との長期的な信頼関係を築くための重要な戦略なのです。

理由①:商品の価値を守ることができる

ただ値下げすると「やっぱり高かったんだ」という印象を与えてしまいます。しかし「グレードを下げる」「保障内容を減らす」といった条件付きなら、価値は維持されるわけです。

理由②:お客様の満足度を高める

何かを諦めた分、次回への期待値が高まります。「次こそは理想のものを」というモチベーションが生まれるのです。

理由③:長期的な関係構築につながる

「2年後にまた提案します」という約束により、継続的な接点が生まれます。単発の取引ではなく、長期顧客として育てることができるのです。

まとめ|「価格が高い」と言われたとき「何が高いのか」を明確にしよう

営業で「価格が高い」と言われたとき、すぐに値引きするのは絶対にNGです。まず「何が高いのか」を明確にするため、価値への異議なのか、支払い能力への懸念なのかを質問しましょう。

そして、商品の価値を守りながら成約につながるように価格交渉を進めていきましょう。

価格交渉は、セールスパーソンにとって避けられない場面です。しかし、正しい判断基準と切り返しトークを身につければ、恐れる必要はありません。

むしろ、お客様との信頼関係を深め、長期的なビジネスにつながる絶好の機会なのです。

もし貴社の営業組織が価格交渉で課題を抱えているなら、弊社の無料相談をご活用ください。実践的なトレーニングを通じて、チーム全体の交渉力を底上げするプログラムをご提案いたします。

まずはお気軽にお問い合わせください。

RECOMMEND

一覧に戻る