営業で「検討します」と言われたときの切り返しトーク
「検討しますと言われたら、どう返せばいいのか分からない」
クロージングクロージング直前でそういう一言を受け取るたびに、頭が真っ白になるセールスパーソンは少なくないでしょう。商談が盛り上がっていたのに、「検討します」で空気がしぼんでしまう。なんともいえない気まずさは、営業経験者なら誰もが身に覚えがあるはずです。
実は「検討します」という言葉には、お客様が口に出さない本音が隠されています。表面だけ受け取って「では来週ご連絡します」と引き下がるのは、ほぼ失注への道といえるでしょう。
本記事では「検討します」の本質から、絶対にやってはいけないNG対応、今日から使えるリアルな切り返しトーク例文まで体系的に解説します。読み終えるころには、「検討します」をもらっても慌てず動ける自信が身につくでしょう。
東京工業大学卒業後、博報堂を経てプルデンシャル生命保険にて4年連続MDRT会員。営業所長・支社長としてマネジメントも経験し、育成メンバーの約60%をMDRT会員に育成。2019年、営業を科学することに特化した株式会社インビクタスを創業。
プロフィール詳細を見る →「検討します」は9割が断り?その本当の心理
「検討します」という言葉の本質を正確に理解できているセールスパーソンは、実はそう多くありません。表面的な意味だけ受け取ると、後の対応が的外れになりやすいのです。切り返しトークを学ぶ前に、まずお客様がなぜ「検討します」を使うのかを心理レベルで押さえておきましょう。
- 「検討します」は”決断の先延ばし”という言い訳である
- 「検討します」に隠れた3つの本音を見抜く方法
- なぜ顧客は「断ります」と言わないのか
心理の構造をつかめば、切り返しの方向性が自然と見えてきます。
「検討します」は”決断の先延ばし”という言い訳である
結論からいうと、お客様の「検討します」は本気で検討したいわけでないことがほとんどです。購入という決断は現状を変えることであり、人間は本能的に変化を避けようとします。「決断したくない」という弱さから出てくる言い訳が、「検討します」なのです。
正直に「買いたくない」とは言いにくいため、「考える時間をください」という体裁を整えた言葉が出てきます。だからこそ、真に受けて「では来週ご連絡します」と引き下がるのは非常に危険。帰宅後、お客様が真剣に検討する時間を取ることはまずないのです。
「検討します」に隠れた3つの本音を見抜く方法
「検討します」の一言には、大きく3つの異なる本音が隠れています。パターンを見極めることが、適切な切り返しの出発点です。
- 断りの「検討します」:本音はほぼ断り。商品・セールスパーソン・タイミングのいずれかが合っていない状態です。
- 優先度が低い「検討します」:内容は悪くないと思っているが、今すぐ決める必要性を感じていない状態です。
- 本当に比較検討中の「検討します」:ごく少数ですが、競合比較や家族への相談が必要な場合も存在します。
大半は最初の2パターンです。後日改めて連絡しても熱量は確実に下がっています。「検討します」をもらった場での切り返しこそが最大のチャンスといえるでしょう。
なぜ顧客は「断ります」と言わないのか
日本人は特に「ノー」を直接伝えることが苦手です。面と向かって断ることで相手を傷つけてしまうのではないかという心理が働くのです。また「断った後も食い下がられたくない」という防衛本能も持ち合わせています。
「検討します」と言っておけば、商談の場は穏やかに終われます。多くのお客様が選ぶ回避策です。「断ります」と言わないのは、セールスパーソンへの遠慮や気遣いから来る行動なのです。「断ります」と言わない背景を理解しておくと、「検討します」を受け取ったときのショックが和らぎ、冷静に次の手を打てるようになるでしょう。
「検討します」と言われる営業側の原因
「検討します」をもらいやすい営業とそうでない営業には、明確な違いがあります。切り返しトークを覚える前に「なぜ保留になるのか」という原因を理解しておくと、商談全体の質が変わってくるものです。自分の商談パターンを振り返るきっかけにしてみてください。
- 「検討します」と言われやすい営業パターン
- 「何を検討するんですか?」と聞くのがNGな理由
心当たりがある方は、今すぐ自分の商談プロセスを見直してみましょう。
「検討します」と言われやすい営業パターン
「検討します」をもらいやすい商談には、共通した問題が潜んでいます。主に3つのパターンが原因として挙げられます。
- タイミングのミス
お客様の購買意欲がピークに達していない状態でクロージングをかけてしまうケースです。「まだ聞いている途中なのに」と感じていれば、当然保留になります。 - ヒアリング不足
お客様が抱える不満・不安を十分に引き出せないまま提案に入ってしまうパターンです。「自分の悩みが解決できる」という実感がなければ、決断は生まれません。 - 提案のズレ
プレゼンはうまくできているのに、お客様の課題に刺さっていない状態です。「いい話だけど自分ごとではない」と感じさせてしまいます。
購買心理は「無関心→不満・不安→欲求→関心→解決策→決断」という流れで進みます。各ステップを丁寧に踏まずに急ぎすぎると、お客様は「保留」という形でブレーキをかけるのです。
「何を検討するんですか?」と聞くのがNGな理由
「検討します」と言われた瞬間に「何をご検討されるんですか?」と返すセールスパーソンがいます。しかし、実は避けるべき質問です。
実際のところ、お客様は「何を検討すべきか」をそもそも整理できていないのです。聞かれると混乱し、「もう少し考えます」という態度がより強固になるだけです。
代わりに「何かご不安な点や、引っかかっていることはありますか?」と本音を引き出す質問へ切り替えましょう。「検討します」の裏にある本当の懸念を言語化してもらうことが、商談の突破口になるのです。
「検討します」と言われた直後の切り返しトーク具体例6選
ここからが本題です。「検討します」と言われた直後にどう動くかで、商談の成否が決まります。即座に反論するのではなく、一度共感した上でお客様自身に「今決めた方がいい」と気づいてもらうプロセスが鍵です。以下6つのアプローチを状況に応じて使い分けてみてください。
- まず「ありがとうございます」|即バット法がNGな理由
- 記憶が新鮮なうちに決断を促す
- 「判断基準がない」に気づかせる
- 温度感を数値化する質問
- 「時期を理由にした保留」への切り返し
- 検討期限と次のアクションをその場で決める
いずれのトークも今日から実践できます。まず自分の商談スタイルに合うものを選んで試してみましょう。
まず「ありがとうございます」|即バット法がNGな理由
「検討します」と言われた瞬間、多くのセールスパーソンが焦って反論しようとします。いわゆるイエスバット法(一度受け入れてから反論する話法)をすぐに使い、「ですよね、でも…」とかぶせてしまいます。逆効果です。
「検討します」と口にした瞬間のお客様は、まだ心が揺れている状態です。食い下がられると「やはり断ってよかった」という確信に変わってしまいます。最初の一言は共感から入ること。「ゆっくりお考えになりたいですよね、よく分かります」と、まずは深く受け止めましょう。反論は共感の後でしか機能しないのです。
記憶が新鮮なうちに決断を促す
共感した後に使える切り返しがあります。「今という瞬間が最も正確な判断ができるタイミングである」ことに、お客様自身で気づいてもらうアプローチです。
切り返しトーク例①(記憶の鮮度パターン)
「高いお買い物ですから、週末ゆっくりご検討されたいですよね。お気持ちはすごく分かります。
ただ、〇〇さんのように第一線でご活躍されているビジネスマンの方は、『週末考えようと思ったけど、結局忙しくて1秒も考える暇がなかった』とおっしゃる方が非常に多いんです。
〇〇さんも毎日お疲れで帰宅されて、玄関を開けてビールをプシュッと開ける前に『さあ、営業マンの資料をバサッと広げて真剣に考えよう!』ってなりそうですか?ならないですよね。
ならば、記憶が100%新鮮な今まさにピシッとご判断いただいた方が、正しい決断ができると思うのですが、改めてこちらのプランで進めさせていただいてよろしいでしょうか?」
「第三者話法(他のお客様のエピソードとして話す手法)」を使うことで、押しつけがましさがなくなります。人間の記憶は時間とともに確実に薄れていきます。記憶が100%新鮮な今がベストな判断タイミングだと気づかせることが、トークの核心です。
「判断基準がない」に気づかせる
2つ目のパターンは「判断基準の不在」に気づかせるアプローチです。「検討しよう」と思っていても、何を基準に判断するかが定まっていなければ、いくら時間をかけても答えは出ません。
切り返しトーク例②(判断基準パターン)
「ご検討されたいお気持ち、よく分かります。大事なご決断ですから当然ですよね。
ただ、『持ち帰って考えたい』とおっしゃるお客様に、いつもお伺いしていることがあります。『どういう条件が揃ったら始めて、どういう場合はやめておくかという、明確な判断基準はご自身の中にありますか?』と。
そうすると皆様、『確かに明確な基準はないね』とおっしゃるんです。判断基準がないまま1週間経っても、ただ記憶だけが薄まって『もう一度話を聞かせて』となる方が大変多いんですね。
ですので、もしここまでの話を聞いて『内容がいいな、始めた方がいいな』と思っていただけているなら、ぜひお手続きを進めさせていただくことが多いのですが、改めていかがでしょうか?」
「いつもお客様にお伺いしています」という第三者話法が圧迫感を消す役割を果たします。お客様自身に「自分には判断基準がない」と気づいてもらうことで、保留の根拠が静かに崩れていくのです。
温度感を数値化する質問
お客様の意欲の「温度感」が分からないと、切り返しの方向性が定まりません。意欲を数値化する質問が効果的です。
切り返しトーク例③(温度確認パターン)
「〇〇さんの中で、やりたいという気持ちとやめておこうという気持ち、今何対何くらいですか?」
(例)「うーん、6対4くらいかな」
「ありがとうございます。6割やりたいとのことですね。お値段はいかがでしょうか?」
(例)「問題ないかな」
「もし始めるとしたら、AプランとBプランどちらから始める確率が高そうですか?」
温度確認の質問には2つの効果があります。お客様が自分の意欲を言語化することで、決断への意識が高まること。そして「やりたい6割」という答えが返ってきた場合に「6割の気持ちで一歩踏み出してみませんか」と背中を押せることです。数値化によって、商談の空気が一変します。
「時期を理由にした保留」への切り返し
「年末なので落ち着いてから検討します」「年度が変わってから考えます」という保留も頻出パターンです。具体的な理由があるぶん、実は切り返しやすいといえます。
切り返しトーク例④(時期保留パターン)
「ありがとうございます。ただ、正直に申し上げると、『年末にご連絡します』とおっしゃっていただいたお客様から、実際にご連絡いただいたことがほとんどないんです。
年末って、考え事を持ち込まずにスッキリした状態で新年を迎えた方が気持ちいいですよね。今日ここで白黒つけてしまった方が、〇〇さんも年末年始を爽やかに過ごせると思うのですが、いかがでしょうか?」
「年末はスッキリしていたい」という感情に訴えるのが肝です。「保留=宿題を年末まで持ち越す」という視点に切り替えることで、「今決めた方が楽」という気持ちを自然に引き出せます。
検討期限と次のアクションをその場で決める
切り返しを試みてもなお「少し考えさせてください」となる場合もあります。最低限やるべきことがあります。「いつ・何を・どうするか」を商談の場で握ることです。
- 「では〇月〇日に改めてお話ししましょう。次回の商談で最終的なご判断をいただけますか?」と日程を確約する。
- 「次回お会いするとき、何が確認できていればGOしていただけますか?」と判断条件を言語化してもらう。
次回アポイントの日程と「何が揃えば決断できるか」の条件を確認してから席を立つのが鉄則です。曖昧なまま終わると、次の連絡が取れなくなるリスクが高まります。商談内でアクションを決めることが、受注への最後の橋渡しになるのです。
まとめ
「検討します」という言葉の多くは、お客様の「決断を先延ばしにしたい」という心理から生まれます。本記事の要点をまとめると以下の3点です。
- 「検討します」の9割は断りか保留です。後日連絡しても熱量は下がる一方なので、言われた場での切り返しこそが最大のチャンス。
- 切り返しは「即反論」ではなく「共感→本音の引き出し→気づきの促し」という順番で行うことが大原則。
- 「記憶の鮮度」「判断基準の不在」「意欲の数値化」という3つのアプローチを、状況に応じて使い分けましょう。
「検討しますと言われたら」どう動くかは、すべての業種のセールスパーソンに共通して求められるスキルです。今日学んだトークを1つでも実践し、商談の質を少しずつ高めていきましょう。